Story
ストーリー

誕生秘話01:人吉球磨の恵みから生まれたブランド
熊本県・人吉球磨地域の豊かな自然と風土を背景に、2019年に誕生した「球磨川アーティザンズ」。海外での公認会計士としてのキャリアを経て地元に帰ってきた田畑奈津さんと、お茶屋の女将さんをしている立山まき子さんのふたりが立ち上げたこのブランドは、地域資源を活かし、現代の暮らしに馴染む"食のかたち"を発信しています。「日常に寄り添いながら、豊かに心が弾むようなものを」──そんな想いから生まれる商品には、それぞれ開発順の番号がつけられ、ひとつひとつに想いやこだわりが込められています。

誕生秘話02:直面した壁と再起への後押し
2020年7月、熊本県・球磨川流域を襲った豪雨災害。球磨川アーティザンズが立ち上がってわずか1年目のことでした。大切に準備してきた原材料や完成品はすべてが水に浸かり、再起不能とも思える甚大な被害を受けたのです。それから半年ほど、自宅が被災した立山まき子さんをサポートしながら応援したい思いを寄せてくれた若い人たちと田畑さんは被災地を巡り、清掃や物資の運搬などの支援活動に力を注ぎました。そんな中、人吉球磨全域の農家さんから「生姜ができたよ」「栗がとれたよ」といった連絡が次々と届きます。「どんな状況でも、四季は巡るんだな」。自然のリズムと人のつながりに背中を押されるように、再び商品開発へと動き出すことを決意しました。そして青梅も次の夏には立派な実になって球磨川アーティザンズの手元に運ばれてきました。

こだわり01:季節を塗る、まろやかなひとさじ
球磨川アーティザンズの商品名には、それぞれ開発された順番を表す番号がつけられています。『No02』がついた『バニラビーンズ入り梅バター』は、朝のパンにそっと添えたくなるような、ちょっとしたご褒美の味を目指して生まれた商品です。青梅を取り扱うときにちょっと熟した梅が放つ鮮烈な香りに、田畑さんは魅了されました。しかし、果実を口にすると強烈に酸っぱい。この香りを閉じ込めながらまろやかに味わう方法を模索していきついたのがバターとバニラの組み合わせでした。木の上で熟すことの無い梅は、青いまま収穫して太陽の下で大切に転がしながら追熟させます。マダガスカル産のバニラビーンズをたっぷり加えて、宮崎県産の発酵高千穂バターを合わせることで、ほんのり甘く、ふわりと香るクリーミーな梅のバターが完成しました。パンに塗っても、パンケーキに添えても楽しめる、世界にひとつだけの "新しい朝の定番"が生まれました。

こだわり02:塩梅の妙と、バニラの余韻
この梅バターは、梅の酸味とバターのコク、そして天然バニラの香りが重なり、あとを引くようなまろやかさが魅力です。バターは、九州地方の生乳のみを使用した高千穂バター。梅は「梅はその日の難逃れ」の言い伝えのとおり、心づくしの梅仕事の伝統を受け継ぎ、人吉球磨地方で選りすぐられたものを香りよく完熟させて使用しています。そこに、マダガスカル産のバニラビーンズを贅沢に合わせ、甘さ、酸味、香りの絶妙なバランスを実現しました。食品添加物や着色料は一切使用せず、素材の持ち味を最大限に生かした自然派スプレッド。パンやヨーグルトにはもちろん、料理やデザートにまで幅広く活躍してくれます。

こだわり03:旅する目線で、地元の味を再発見
田畑さんの海外での生活、そして世界を旅し、さまざまな国や地域で出会った"その土地らしい味"。それらの体験は、球磨川アーティザンズのものづくりにも大きな影響を与えています。海外で得たインスピレーションをヒントに、地域の食材の魅力を最大限に引き出す商品を生み出してきました。梅バターもそのひとつ。ありのままの素材の色や香りを大切にし、余計な加工を加えずに仕上げることで、国内外のどこでも通用する"おいしいローカル"へと昇華させたのです。また、球磨川アーティザンズでは、SNSなどを通じて多彩なレシピ提案も発信しています。世界の食文化に触れた田畑さんならではのユニークな組み合わせも多数。旅する目線で見つけたアイデアが、地元の素材に新たな魅力を添えています。

想い:地方から、暮らしの新しい景色を
球磨川アーティザンズの田畑さんは、もともと公認会計士の資格を持ち、海外経験も豊富な経歴の持ち主。だからこそ感じた「日本の食料自給率の低さ」や「地方の農業や産業が抱える課題」に対して、現場から声をあげたいという想いが根底にあります。農家さんとの信頼関係を大切にしながら、個性ある素材を"現代の暮らしに馴染むかたち"で提案する。梅バターも、そのひとつの表現です。さらに田畑さんは、今の取り組みを通じて、地元の子どもたちがグローバルな視野を持ち、夢を描いて生きていけるような社会を目指したいといいます。「次の世代の子どもたちに、なにかしらのインパクトを残すことが、自分にできること」——そう語る田畑さん。今は地元の素材で加工品をつくることがその手段ですが、将来的には違う表現方法もあるかもしれないと話します。食を通じた地域づくりは、あくまで一つの入口。その先に続く、広くて自由な未来を、田畑さんは見据えています。梅バターの瓶には、そんな想いが詰まっているように感じました。
球磨川アーティザンズのシンボルマークには「球磨川くだり」の和舟が描かれています。この和舟には、球磨川流域で育まれた恵みが川をくだり、大海へ出てたくさんの人のもとへ届いていってほしい──そんな願いが込められています。田畑さんの想いと重なるように、この小さな舟が運ぶのは、地域の可能性と、未来への希望なのかもしれません。
球磨川アーティザンズ
https://kumagawaartisans.com/


おすすめの食べ方


バニラビーンズ入り梅バターのバゲットトースト
スライスしたバゲットにバニラビーンズ入り梅バターをたっぷり塗って、軽くトーストするだけ。表面はカリッと、中はふわっと香る贅沢なひとくちに仕上がります。梅とバニラの甘酸っぱい香りが立ちのぼり、シンプルながら心に残る味わいです。仕上げにチーズを削りかければ、おもてなしにもピッタリな贅沢なおつまみに。


バニラビーンズ入り梅バターのハムチーズサンド
香ばしく焼いたパンにたっぷり塗って、ハム、チーズ、シャキッとしたきゅうりをサンドすれば、甘じょっぱい味わいがクセになるサンドイッチに。朝食や軽食にぴったりの、ちょっと大人の贅沢アレンジです。