Story
ストーリー

誕生秘話:海とともにある暮らしから
長崎県の西部、青い海に大小の島々が連なる五島列島。その中通島にある新上五島町で、先代・犬塚虎夫氏が五島うどんの製麺所を立ち上げたのが五島の「虎屋」のはじまりです。創業から35年以上、受け継がれてきた五島うどんづくりの技と精神。その背景には、うどんづくりに欠かせない塩の存在がありました。「五島うどんにかかせない塩も、目の前の海の恵みを利用して、自分たちの手つくりたい」。そんな想いから、虎屋の塩づくりは始まります。塩から自分たちでつくる五島うどんの製麺所は虎屋だけ。


社長の南慎太郎さん自身、幼い頃から海が大好きで、遊び場はいつも目の前に広がる美しい海でした。潮の流れや海辺の生き物たちの小さな変化を理解できるようになったのも、ごく自然なことだったのかもしれません。

虎屋が手がける「まあるい塩」シリーズは、そんな海との対話のなかから生まれたもの。食の軸として、島の味をまっすぐ伝える存在として、今では看板商品として多くの人に愛されています。

こだわり01:自然からもらった発想と製法
「火を使う前に、まずは太陽と風の力を借りて」。南社長が目指したのは、できるだけ自然の力を活かす製法でした。塩田には、五島の大きな玉石が敷かれています。これは、かつて海で泳いだあと、体を温めてくれた石の記憶から着想を得たもの。石が太陽の熱を蓄え、それを活かして水分の蒸発をゆるやかに促します。上部に吊るされたのは、使われなくなった古い漁網。海水が網を伝って落ちる間に、風と熱が自然と濃縮を進めていきます。
さらに、塩を炊き上げる際の釜には、地域の飲食店や家庭から出た廃食用油を燃料として使用。独自の燃焼装置により、煙や臭いをほとんど出さず、環境への負荷を抑えています。廃油の活用は、資源の循環と地域の持続性を考えたものでもあり、五島の未来を見据えた"塩づくり"の一部なのです。

こだわり02:結晶のちがいが、味のちがい
「まあるい塩」は、釜で炊いた際に最初に結晶化する部分を丁寧にすくい取った希少な塩。炊き始めの段階では、苦味成分であるマグネシウムがまだ溶け出していないため、結晶は粒が大きく、丸みを帯びた優しい味わいに仕上がります。炊き続けると、塩の味はどんどんシャープに変化し、苦味も強まっていきます。そのため、「まあるい塩」は最もまろやかで食材の持ち味を引き立てる塩として、特別な存在とされています。製造量も限られており、1日に生産できるまあるい塩の量はわずか3kg~5kgほど。さらに、海水の採取から製塩までを一貫して行う虎屋の塩は、第三者機関の調査によってマイクロプラスチックの混入が100万分の1以下という極めて純度の高い品質が証明されています。自然の恵みと丁寧な手しごとから生まれる「まあるい塩」は、料理にやさしさと安心を添える、"ごほうびのような調味料"なのです。


想い:塩が真ん中にあるものづくり
「五島の塩を、五島の未来につなげたい」。
虎屋の塩づくりは"おいしい塩をつくる"ことにとどまらず、地域資源の循環や持続可能な暮らしと深く結びついています。
商品づくりの中心には、いつも「塩」があります。まあるい塩、塩こしょう、ハーブ塩——それぞれに合ったレシピや食材があり、五島うどんやスープ、スイーツなど、さまざまな商品の軸にはかならず「塩」がありました。
その発信拠点として、2024年には直営カフェもオープン。虎屋の塩や五島うどんを使った多彩なメニューが楽しめるこの場所は、島内外から訪れる人たちの交流の場となっています。「地域の人たちがふらりと立ち寄れて、観光客とも自然につながる。そんな風景ができてきたのがうれしいですね」と南社長。
日々の暮らしの中に、塩を通じたちいさな感動を。"食卓に並ぶ塩の向こうに、五島の海が見えるようなものづくり"を、虎屋はこれからも続けていきます。


株式会社 虎屋
https://www.goto-toraya.com
おすすめの食べ方

まあるい塩×卵かけごはん
炊きたてのごはんに卵白を混ぜ、まんなかに黄身を落とし、まあるい塩をひとつまみ。まろやかで角のない塩味が、卵の甘みとごはんの香りをやさしく包み込みます。醤油はいらない、卵かけごはんの新定番スタイルです。

塩こしょう×ステーキ
美味しい塩を味わうには、できるだけシンプルな料理に。焼きたてのお肉にふりかけると、香ばしさとスパイスのバランスが絶妙に立ち上がり、お肉本来の旨味をグッと引き出してくれます。

ハーブ塩×魚のソテー
ハーブ塩は、魚のソテーやグリルに。下味はせず、仕上げにぱらりと振りかければ、五島の風を感じるような、爽やかな香りと深みのある味わいに。レモンやオリーブオイルとも好相性です。