Story
ストーリー


誕生秘話:"八女茶"の名を背負って
福岡県八女市に店を構える「許斐本家」は、江戸時代から300年以上続く老舗の茶商です。九州における玉露の名産地として知られる八女。その歴史の一角を担ってきた同家は、明治の終わりに"八女茶"という名前をつけ、全国へと広めた存在でもあります。
現当主で14代目となる許斐健一さんは、大学生の頃に受けた取材をきっかけに、自らのルーツや土地の文化に目を向けるようになりました。家業を継ぐと決めた後は、戦前の建物を可能な限り原型に戻し、失われかけた製法や味わいをひとつずつ蘇らせるという挑戦を続けています。
その取り組みのひとつが、「焙炉(ほいろ)式製法」で仕上げた玉露づくり。時間も手間もかかる方法ですが、そこにこそ本来の八女茶の魅力が宿ると、健一さんは語ります。


こだわり01:"ほいろ香"が生きる、伝統の製法
「焙炉(ほいろ)式」とは、茶葉を炭火の熱と空気の流れだけで乾燥させる、江戸時代から続く伝統的な製茶技法です。この製法でお茶を仕上げる生産者は全国的にもかなり稀少ですが、許斐本家ではこの製法を今も守り続けています。
茶葉を乾燥させる"火入れ"の工程は、仕上がりを左右する最も重要な部分。職人は炭火の温度、湿度、風の流れ、茶葉の状態を五感で感じ取りながら、繊細に火を入れていきます。そうして仕上げたお茶は、芳ばしさと甘みが合わさった独特の"ほいろ香"をまとい、香味に奥行きが生まれます。
焙炉式の火入れには地元・八女の木炭を、焙炉台には八女の手漉き和紙を貼った助炭を使用。許斐本家では、自然に恵まれた八女だからこそできる、地域に根ざしたものづくりを大切にしています。

こだわり02:玉露ならではの甘みと深み
焙炉式で仕上げたこの玉露は、ふくよかな甘みと深い旨みが特長。被覆栽培によって日光を遮られながら育った茶葉は、渋みが少なく、やわらかくまろやかな風味を持ちます。湯を注いだ瞬間にふわりと立ちのぼる香りも、茶の時間を豊かにしてくれる要素のひとつです。
本商品は、そんな上質な茶葉を贅沢に使ったティーバッグタイプ。急須がなくても、お湯さえあれば手軽に本格的な玉露を味わえます。ティーバッグだからといって味の妥協は一切なし。抽出後に広がる味と香りは、まさに「特別なお茶時間」にふさわしい一杯です。

想い:澄みきったお茶と、まっすぐな商い
『焙炉式八女玉露ティーバッグ』には、300年近く続く許斐本家の"にごりのないものづくり"の姿勢が宿っています。「お茶も商売も、にごりのないものを提供したい」と語る十四代・許斐健一さん。その言葉のとおり、製法においても、味わいにおいても、ごまかしのない真っ直ぐな姿勢が貫かれています。自然の力と人の技でていねいに仕上げたお茶には、飲み手にその想いが真っ直ぐ届くような、澄んだ味わいがありました。
許斐本家は、江戸・享保年間の創業以来、約300年の歴史をただ守るのではなく、「暮らしの中にある美しさ」を見つめ直しながら、八女茶の精神とともに生きてきました。戦前の日本家屋を修復し、道具を選び、茶室での所作を大切にする。そこには「調和」や「もてなし」の精神が息づいており、一杯のお茶にまでその美意識が注がれています。
ほんのひととき、丁寧に淹れて味わうことで、忙しい日常の中にも静かな非日常が立ち上がる——そんな一杯を、暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

美味しい淹れ方

沸かしたお湯を50度~60度にさましてからそそぎます。3分位おいて、ティーバッグを取り出しますが、最後の一滴までお湯をしぼりきることで、玉露の旨みを最大限にたのしむことができます。
